戦前のチェイスマシン?

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古書販売で見つけた丸茂電機の昭和初期のカタログを4冊持っていますが、その中に「古代のチェイスマシン」とでも言うべき非常に興味深いものがあったので紹介します。

公衆ノ眼ヲ惹ク新シキ照明

昭和8年 (1933年) 発行と思われる、型録No.B-3「公衆ノ眼ヲ惹ク新シキ照明」の中に、それは出てきます。

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このカタログは表紙にミラーボール (商品名「クリスタルボール」) が大きく掲載されていることからも分かるように、「演芸場、ダンスホール、カフェー等ノ変化ノアル新シキ照明」に向けたカタログです。つまり、劇場ではないが「軽い演出照明」が必要とされる商業施設をターゲットとしています。

現在であればAmerican DJ等のローエンド~ミドルエンド系が得意とする領域であり、初期から歌舞伎座などの本格的な劇場ばかり手掛けてきた丸茂電機の中では異色のカタログと言えるでしょう。

このカタログの5ページ目に、「丸茂 自動変色調光器」というのが出てきます。

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大きな円盤状の調光器が3台、その隣に何か機械仕掛けが置かれています。
商品説明に

間接照明の変色調光或いは「スポットライト」数色の組合せの調光は近代照明の審美でありまして何人も其の心地良き変化に満足を感ずることは同じでありましょう。
大劇場、大映画場、大講堂等にありましては照明の係の方々も居られますが之を自動的に行い得る事は如何なる場合にも望ましい事でなければなりません。

(中略)

抵抗調光器三台或いは四台を組合せ堅牢なる電動装置並びに減速装置によりまして適当の回転を得しめ心地よき調光と変色照明を行うものであります。

(註:原文を現代仮名、現代漢字に改め、送り仮名を補った)

と書いてあることから、おそらく右端の機械駆動部がゆっくりと回転することで、3つの調光器が順番にフェードイン、フェードアウトを繰り返していく機構であったものと推測できます。

つまりこれはチェイスマシンですね。チェイスと言ってもフェード専用ですが。

「大劇場、大映画場、大講堂等にありましては照明の係の方々も居られますが……」とわざわざ前置きしていることから、専任の照明技術者がいないような小規模舞台、宴会場も視野に入れていることが分かります。


ちなみにこの年代 (1933年) はまだギリギリ、オートトランス式調光器が実用化される前の時代でした。
よって、この円盤状の調光器は金属抵抗器ですね。大きな金属の塊を3個も積んで、相当に重い機材だったことでしょう。

この機材が直接現代のチェイスの概念に繋がっているわけではありませんが、「自動でふわふわ、チカチカ照明が変化したらちょっとした演出になる」ということは昔の人もよく理解していたのですね。


おまけ:戦後のチェイスマシン

今でこそチェイスというのは調光卓の機能の一部に取り込まれ、関数を使用したエフェクトに昇華していたりもしますが、電気的なリレースイッチを用いたチェイスマシンも存在したようです。


この手のものは、日照が得意としていたようです。日照と言えばミラーボールや学校向け舞台設備などを得意とするメーカーです。まさにこの記事に出てきたような、「軽い演出照明」の分野ですね。
こういった市場は今も昔も、一定のニーズがあります。

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