【舞台用コンセント】T型コネクタについて

0

舞台で使われる電源コネクター(差込接続器)のうち、「T型」と呼ばれるタイプについて説明します。

T型コネクタ

T20_male_female

左:プラグ 右:コネクタボディ


【コネクターの基礎用語】

オス(♂)…「差し込む側」のコネクタ
メス(♀)…「差し込まれる側」のコネクタ
プラグ…オス(♂)と同じ意味
コネクタボディ、ボディ、ボデー…メス(♀)側のうち、延長コードの♀側などに使うもの
コンセント…メス(♀)側のうち、壁などに埋め込まれたり固定されているもの
定格電圧…その電圧までは恒常的にかけてよい電圧。舞台用コネクタは「125V」か「250V」。
※実際に流れてくる電気の電圧ではない。日本の劇場で実際に流れてくる電気は 100V か 200V。
定格電流…その電流までは恒常的に流してよい電流。定格電圧とともに、コネクタに「125V 20A」などと刻印してある。

形状と特徴

刃がT字に2本配置されている見た目から、俗に「T型」と呼ばれます。

規格上は、JIS C 8303「配線用差込接続器」の中にある、平刃・2極・定格20A250Vのコネクタです。
JISC8303_T

C型と異なり、舞台照明特有の規格ではなく、JISに昔から定められている汎用コネクタの一種です。

250V定格のコネクタではありますが、舞台照明の文脈では専ら「100V・20A」用のコネクタとして長らく標準的な立ち位置を占めていました。公共ホールの場合は、サスバトンをT型で施工し、フロアコンセントをA型30A (C型30Aの前身) で施工するというスタイルが一般的でした。

小劇場においては、安価に手に入る汎用的な20Aコネクタとして、現在でも多く使用されています。

一方で、定格が250Vであることから、一般家庭ではエアコン電源の200V配線に使われていた時期がありました。
家庭用では黒いプラグではなく、白やアイボリー色の、四角い形が特徴のプラグが使われていたようです。
WF5222_MP7003_T20

よって、このコネクタは同じ形状で100V系と200V系の両方に使われることのあるコネクタです。

劇場でも、ポツンと離れたところにあるT型コンセントを見かけた場合、エアコンなど特定用途の200V電源ではないか、十分に注意してから接続する必要があります。


代表的なコネクタメーカー

舞台照明で使われるT型コネクタは、以下のメーカーのものがよく使われます。

  • 明工社 … 「3Mシリーズ」MP2561(プラグ) / MC2639 (ボディ) / MC2655 (ボディ)
  • 西川電機 … 型番不明
  • Panasonic … WF52201(プラグ) / WA1229 (ボディ)

このうち、西川電機はすでに存在しない会社と思われますが、ほとんどデファクトスタンダードと言ってよいくらい大量のT型が流通しています。中古で灯体を購入すると大抵西川のプラグが付いています。
西川T20
▲西川のTコネクタ (クリックで大きくなります)

また、Panasonicはコネクタボディの直径が他社より一回り大きく、割れやすいのであまり使われません。プラグについても、WF5220 (末尾の1が付かない) という型番は他社よりも一回り大きく、隣り合ったコンセントに並べて接続できないという注意書きがわざわざパッケージに書いてあります。

WF5220_caution

実は明工社も同じように直径の大きいプラグラインナップしています。おそらく、各社とも初期はこの大きさで、後から直径の小さいモデルが登場したのでしょう。

総合すると、最も設計が優れているのは明工社の3Mコネクタです。「引締結線」という、圧着端子を使わずに強度の保てる接続方法も使うことができます。

今後、保守用でT型を新規購入する場合、明工社3Mシリーズに統一することをおすすめします。(どうしても西川タイプが良いという場合、パナのWF52201が最も近い選択肢になります。)


T型コネクタの歴史

T型コネクタの歴史は非常に古く、1930年代の文献や建築には早くもその姿を見ることができます。
10A・20A・30Aの標準コネクタとして、平行・大平行と共に登場します。(平行が15Aではなく10Aなのも興味深いですね)
T20_oikawa1935
及川邊(1935)「配線材料及器具」照明学会雑誌19巻11号
 
また、JISの前身であるJES規格に登録されていたようです。(JES 電気 8303 → JIS C 8303)

さらに歴史を遡ると、NEMA 2-20 というアメリカの古い規格に酷似しており、NEMA 1-15 (平行) と共に日本に持ち込まれたか、少なくとも参考にした可能性が非常に高いです。

このようにT型は、現在普及しているほかの20Aコネクタよりも一足早く登場したものでした。
また、上の図で平行コネクタと一緒に描かれていることからも分かると思いますが、当時は電圧によってコネクタを区別するという発想自体が希薄だったと思われます。

実際、1948年のJES規格についての文献では、逆に平行を250V10Aとして使ってもよいという旨の記載があり、異なる電圧系統で同じコネクタを使用することは、正式に認められていました。
H15_double_voltage

このことが、T型が100V系と200V系両方で使われるという事態を招きました。(決して、舞台照明従事者が勝手な判断で100V系で使っているわけではないことをご理解ください)


そしてT型は、舞台照明においては劇場のサスバトン用途として普及していくこととなります。
C型コンセントの歴史の記事でも述べたように、30A以上のコネクタについてはA型の定評があり、戦前から使われていました。
一方で20Aのコネクタは “S型” なども使われたようですが、使い勝手が悪かったのでしょう、一般用であるT型がちょうどこのポジションに収まったと言えます。


T型コネクタの現在と今後

その後平成初期まではT型の採用が一般的に行われていましたが、JATET (劇場演出空間技術協会) のWebサイトにも記載されている通り、

従来、一般的に使用されていたT型250V 20A差込接続器が、平成元年の電気設備技術基準および
内線規定による ”100V系と200V系の双方に混用できる差込コンセントの使用禁止”、及び平成2年7
月の通商産業省令による”危険が生じるおそれ”があるものとみなす、として100V系での使用が禁止と
なりました。

ということで、以後T型を100V系で使うことは禁止されました。
一方で、200V系については「内線規程」という別の規定によりアース (保護接地) を取ることが実質義務化されているため、これらの挟み撃ちとなり、T型の立ち位置はなくなってしまいました。

これに従い、新たにC型20A(ミニC)D型20Aの開発が進められ、現在新規で建設される劇場はすべてC型20A (200V回路はD型20A) を採用しています。

一方で、既存設備についての取り扱いは明確になっておらず、また大量の採用実績から直ちに全廃もできないことを関係各所も理解しているため、日本照明家協会並びにJATETが独自に問合せを行った結果、日本配線器具工業会から以下のような回答が得られているようです。

T型20AプラグとC型 20Aコネクタ(コードコネクタボディ)との組み合せによる変換コード、及びC型20AプラグとT型20Aコネクタの組み合せ変換コードにおいては、T型20AプラグとC型20Aコネクタの組み合せ変換コード品が望ましいと推察する。但し、変換コードにおけるT型 20A接続器には「100V専用」の表示がなければならない。

出典:『公立文化施設 舞台技術ハンドブック』p.66


正直あまり実務面を意識した回答になっていないと思いますが、要するに

  • 新規のT型施工は禁止
  • 既存設備のT型コンセントに接続するためにT♂―C♀の変換コードを作るのはOK
  • 反対に、C♂―T♀、つまり設備側がC型なのに灯体がT型というのは望ましくない(と言われても…)
  • 変換コードには「100V専用」の旨を明示するべき


という見解が示されています。


ただ、このような規定から30年が経つ現在においても、小劇場を中心にT型は非常に多く使用されています。
これは単に舞台技術者の怠慢というわけではなく、T型が安価で手に入りやすいこと、使い勝手が良いことや、明らかに200V系との誤用のおそれが無いクローズドな空間で運用されているために実務面のデメリットが無いことなど、「乗り換えの動機に乏しい」ことも多分に理由として考えられます。


実際、予算面で言えばミニC型はT型の2倍程度の価格で販売されています。特に舞台照明では大量の延長コードを消費するため、1つの劇場をすべてミニCに置換えた場合、予算面に大きなインパクトがあることは容易に推測できます。


個人的には、調光ユニットの小容量分散化が進んでいるため、もはや20Aのコネクタにこだわる必要もなく、T型から平行15A (アース付き) に移行する選択肢もアリだと思います。
しかし、「平行は世の中にありふれすぎていて、事情を知らない人が掃除機や充電器を刺してしまうかもしれない」という反論もあり、予算と安全性を両立する解は無いものか、日々模索しているところです。



皆さんはどう思いますか。いっそツイスト3Pでも使ってみます……?




おまけ

新幹線の車両端部に、こんなコンセントが付いていることがあります。

T20_shinkansen

これは蓋を開けるとT型で、「100V20A」の業務用電源として使われているようです。
意外なところに生き残っているT型の例でした。

コメント 0

コメントはありません

コメントをどうぞ