DMXアドレスについて (後編)

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前回の記事では、DMXアドレスの現象論的な解説に始まり、DMX信号の簡単な動作原理、「時分割多重化」の概念までを扱いました。

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今回の記事では、DMXアドレスの本質に迫ります。

順番に送られる信号、どれが自分宛か?

さて、いよいよDMXアドレスの正体に迫ります。

時分割多重化は信号線の芯数を減らすことができて便利ですが、一方で単純に信号線を増やす方式に比べて、重大なリスクが存在します。



それは、「順番に送られる信号のどれがどの灯体宛ての命令か分からなくなる」というリスクです。



DMX機器が2台以上ある場合、数珠つなぎ(デイジーチェイン)と言って、1台めの機器のDMX OUT端子から2台めのINへ2台めのOUTから3台めのINへ、……というような接続方法を取ります。

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この時、受信側のDMX機器(灯体や調光ユニット)は、自分宛ての命令かどうかに関係なく、調光卓から送られるすべての命令を受信します。

ということは、流れてきた数値が自分宛てかどうか、受信側が自分で判断して動作する必要があります。

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この「自分宛てかどうか判断する」目的で、DMXアドレスが存在するのです。




実際のDMX信号は、数値を次々に流しているだけで、特に信号側で「今から流す信号は誰々宛ての命令です」と宣言しているわけではありません。
そこで、機器側としては「何番目に流れてきた値か」を確認しています。



たとえば、灯体の背面パネルで「002」と指定した場合、
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2番目に流れてきた値を「自分に関係ある命令」のスタートとし、
→そこから必要な分だけを読み込んで、
→動作する

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という流れになります。この時、設定した「002」のことを「スタートアドレス」と呼びます。




なお、「そこから必要な分だけを読み込んで、」と書きましたが、この “必要な分” というのは、DMX機器の機種によって異なる固有のものです。


たとえばあるLED灯体では、1つの灯体に「赤の明るさ・緑の明るさ・青の明るさ・全体の明るさ(マスター)・ストロボの速さ」の5種類の機能があるので、スタートアドレスから数えて5個分の値を使用します。
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ムービングライトの場合は多機能のため、使用アドレス数が多い傾向にあります。

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ここまでがDMXアドレスそのものについての説明です。



アドレスを重複させた場合

再び実務面の話に戻りますが、複数のDMX機器を接続していて、スタートアドレスを同じにした場合どうなるでしょうか?


答えは、「同じ機種であれば同期して動作する」です。


前述したように、DMX信号の受信側は「受けた信号をそのまま次に流す(自分に関係ある信号であれば動作する)」という性質を持ちます。
つまり、受け取った信号を “食べてしまって” 次に流さない、ということはありません。

よって、同じアドレスを使用する機器が複数あれば、それらはすべて同じ動作をすることになります。

すなわち、演目中明らかに同期させて使用するLED灯体がある場合、アドレスを同じにすることで、調光卓で個別のパッチをしなくても必ず同期するようになります。



ただし、異なる機種(たとえばLED PARとムービングライト)を同じスタートアドレスに設定してしまうと……
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上図のように1つのアドレスで異なる機能を制御することになるので、1本のフェーダーを上げると「LED PARは赤く点灯し、ムービングライトは首を振る」という奇妙な動作になってしまいます。


よって異なる機種は別々のアドレスに設定することが原則となります。



まとめると、
【アドレスを重複させてもよい場合】

  • 同じ機種のDMX機器が複数あり、演出上必ず同期させて使うことが明らかな場合

【アドレスを重複させてはいけない場合】

  • 異なる機種を制御する場合
  • 同じ機種でも、演出の都合上バラバラに制御する可能性が少しでもある場合


ということになります。


「少しでもある場合」と書いたように、通常は可能な限りアドレスはバラバラにした方が演出の幅が広がります。制御側の都合(フェーダー本数が少ない、など)が無ければ、すべてバラバラに設定した方が無難でしょう。



より感覚的な理解のために

ここまで詳細にDMXアドレスについて解説を重ねてきましたが、最後に、より全体像をとらえた “感覚的な” 理解のために、次の2つのモデルを提示しておきます。



①DMXアドレスを「箱」と見る考え方
フェーダーを動かすと「箱」に値が格納され、機器に向かって送信されていくという考え方です。

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「回転寿司のお皿に寿司を乗せてレーンに流す」というようなイメージです。

この見方を取る場合、「パッチ」の考え方をより直感的に理解できます。すなわち、パッチというのは「フェーダーと、値を格納する “箱” の対応を並べ替える行為だ」と言うことができます。

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②回覧板の比喩
DMX信号の性質を「回覧板」に喩えるモデルです。

  • 多重化を行わない信号を、「家ごとに専用の配達道と配達員がある状態」に喩えます。
  • これに対し、DMX信号は「1本の道を通って、回覧板が順次配達されていく状態」と言えます。
  • 回覧板には自分に関係ない事項も書いてありますが、それも含めて次の家(=機器)に回してあげます。

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このモデルを使うと、DMX信号の性質を直感的に振り返ることができると思います。



以上、長い記事でしたが、皆さんの理解につながれば幸いです。

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