DMXアドレスについて (前編)

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DMX信号対応の照明機材に必ずついている「A001」「D001」などの設定項目。
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これは「DMXアドレス」と言います。(より正確には「DMXスタートアドレス」)
DMXアドレスを変更すると何が起こるのか、またDMXアドレスは何のために存在するのか。以下に解説します。


何が起こるのか

DMX機器に全く触れたことのない方のために、まずはアドレスを変更すると何が起こるのか、つまり実際の現場では何をするのか、現象論的な説明をします。


ここでは、シンプルな調光卓1台調光ユニット1台という最小構成をモデルとして考えます。
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本来は調光卓・調光ユニットともに元電源が必要ですが、ここでは省略し、あくまで「フェーダーと灯体」の関係性のみを考えます。




調光ユニットの各ディマーに対し、灯体を接続します。
ここでは便宜上、左からの色の付いた灯体とします。

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次にDMXアドレスを「001」に設定します。

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ここでフェーダー1番を上げれば赤の灯体が、
2,3,4番を上げればそれぞれ緑、青、黄色の灯体が点灯します。
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ここまでは、初めての人でも何となく直感で理解できると思います。






では次に、調光ユニットのDMXアドレスを「002」に変更します。
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すると、次のようなことが起こります。
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上のGIFアニメのように、フェーダーと灯体との関係が1つずれました。
DMXアドレスを変更すると、現象としてはこのようなことが起こります。


フェーダーの並びを変えるため?

さて、ここまでは現象論的な解説でしたが、ここでよくある間違いは、早合点して「DMXアドレスを変える目的は、フェーダーの並び順を変えるためだ!」と考えてしまうことです。実際、そのように解説している文書もたまに見かけます。

それは間違いです。

上述のような最小構成では “結果としてそのようになっている” だけで、それが目的ではありません。


もし、本当にフェーダーの並び順を変えるためなのであれば、連番だけではなく、自由自在にあらゆる順番に変更できないと困ります。
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よって、フェーダーの対応が変わるというのはあくまで結果であり、DMXアドレスの存在意義はもっと別のところにあると考えるべきです。

※「フェーダーの中身を並べ替える」という役割は、パッチ機能によって果たされます。パッチは調光卓の機能です。



複数のDMX機器を制御する

ではDMXアドレスの目的は何かと言うと、ズバリ「複数のDMX機器を、1本の信号線で個別に制御するための識別番号」です。



これまでの説明では、DMX機器 (調光ユニット) は1台のみでした。これを複数とした場合、それぞれをバラバラに制御するためにはどうすればよいでしょうか?という話です。



そこで今度はもっと単純化して、調光ユニットの存在も省略し、「フェーダー、信号線、灯体」というモデルを考えてみましょう。
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まずはフェーダー1本、灯体1台の場合を考えます。信号線は (当然) 1本となります。
信号線の値は定期的に送信されていて、フェーダーを動かすと情報が更新され、灯体の明るさが変わるようになっています。
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これを人間がタイムラグを感じないほどの高速で行うことにより、フェーダーの動きに明るさが追従するようになります。(ここまでは実際のDMX信号と同じです)




次に、フェーダー3本、灯体3台の場合を考えます。この時、信号線はどうすればよいでしょうか。



最も簡単な方法は、信号線を3本に増やすことです。
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この方法は単純ですが致命的な欠点があって、それは灯体の数が極めて多くなった場合です。
仮に100台の灯体があってすべて個別に制御したいとすると、信号線の数は100本となります。

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これでは劇場が大規模になればなるほど、信号線の肥大化を招きます。
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▲芯数の多い信号線のイメージ


こうしたことを避けるために、「何とかして、1本の信号線にたくさんの命令を流せないだろうか?」ということを考える必要があります。

その結果、DMX512信号が採用したのは「時分割多重化」と呼ばれる方法です。

これを理解すると一気にDMXアドレスの理解に繋がるので、一見DMXアドレスの説明から離れてしまう感じがしますが、少し寄り道をしましょう。


時分割多重化とは?

このように漢字で書くと大仰な感じがしますが、読んで字のごとく「間で分割して、なった信号を送信する」ということです。

書いてありませんが、ここには「1本の信号線で」というニュアンスが含まれています。


つまり、「フェーダー10本」の場合、10本のフェーダーの値を同時ではなく、順番に送信することで信号線を1本にできるという考え方です。
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……そんなことをすれば当然、最初の値と最後の値にはタイムラグが発生します。

しかし人間の目にも止まらぬ速さで送信することができれば、タイムラグは感じなくなります。

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このようにして、DMX信号は信号線の芯数を増やすことなく、多数のフェーダーの信号を送信することができるのです。
ちなみにDMXでは、512ch分の信号を1秒間に約44回更新しています。文字通り目にも止まらぬ速さですね。


しかし、この「時分割多重化」は信号線の芯数を減らすことができる一方で、単純に信号線を増やす方式に比べて、重大なリスクが存在します。

後半の記事では、そのリスクとDMXアドレスの役割について本質に迫ります。

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