TOP > 照明ケーススタディ > 【照明ケーススタディ】No.3「小劇場で『屋上』は表現可能か?」

【照明ケーススタディ】No.3「小劇場で『屋上』は表現可能か?」

※照明ケーススタディは、筆者がこれまでに担当した照明プラン・オペレートの中から、一般化できる知見を紹介するシリーズです。
なるべく汎用性のある知見を紹介していくつもりですが、他の記事群に比べると「個」が強く出ることをご理解ください。

IMG_3429

【公演データ】
本番時期: 2012年6月
公演名: 劇団愉快犯『晴レトケ』
会場: 京都大学吉田寮食堂(耐震補修前)
筆者の立場: 照明プランナー(大学通算4回目)兼オペレーター
仕込み図:
haretoke1haretoke2
その他の書類:シーンレシピ ※きっかけは暗記





【記事テーマについて】
小劇場って、黒くて狭いじゃないですか。
そんな状況で、「屋上」の舞台美術を構築された場合、照明としてはどのように対応したらよいのでしょうか?

高校演劇の大会のように、ホリゾントのある劇場であれば、ホリゾントを点灯する←→しない(大黒幕を閉める)という対比で「屋外←→屋内」を表現できます。

また、大きな劇場では前明かりの距離も遠いので、太陽の「無限遠から照らす感じ」をよく再現できます。


しかし、小劇場はこうした点についてとことん不利です。そもそも背景が黒幕ですし。

屋上でなくてただの屋外なら、舞台美術で街並みを作ったりすればごまかせますが、屋上なので「空」しかあってはならないことになります。


……2012年のことなので記憶があいまいですが、どうやらかなり苦悩したようで、照明図面が2枚あります。これは小屋入りしてから深夜にあまりにも上手くいかなくてブチ切れて仕込み直したのです。 (24時間小屋だったので、深夜の仕込み替えが可能でした)


しかし今思えば、ビフォーとアフターで大して変わっていません。前明かりが多少増強された程度です。

実際、最後まで自分の明かりに釈然とせずに終わった記憶があります。


……今だったら、この「屋上」問題に対し、以下の2つの対策を取ると思います。

  1. 上からの明かりを、トップだけでなくナナメ(ぶっち)を入れて左右の幕にかかるくらいまで当て、空間の広がりを出す。
  2. 舞台美術担当と相談し、舞台セットの方からも「屋外感」を出すように調整してもらう。

1.は、今なら絶対にやっていると思います。
そもそも小劇場ではシーリングの明かりが背景幕にかかってしまうのは避けられないので、ならばカミシモの幕・袖幕にも当たっていいじゃないかという理屈です。
当時は、上からの地明かりと言えばトップしか知らなくて、それが当然だと思っていたのです。
トップだけでは、「曇り空」「雨」は表現できても「晴れ」が難しかったのです。
さらに、同じようなぶっち系方向からソースフォーで雲のゴボを出したりして、雲によって日差しがまだらになっている感じを表現してもいいでしょう。


2.は、少し難しいですが、会場の吉田寮食堂の空間はまだ奥行きに余裕があり、「舞台の最奥」から「背景幕」までの間にわざと空間をあけることも可能だったと思います。
わざと空間をあけたうえで、その部分を薄くスモーク+弱い照明などで「空間を埋める」努力をしたり、背景幕にビルの遠景を描きこんだりすれば、偽の奥行きが強調されて、多少は屋外っぽさが出たかもしれません。

それでも、タッパが3mしかないのではどうしても「天井の圧迫感」が強いので、もはや脚本から変えるしか無いのかもしれませんが……


いずれにせよ、この件は

  • 小劇場において、「屋上」の表現は困難が伴う
  • 照明は舞台美術に強い依存性を持つ

ということが強く意識された公演でした。




【その他の感想・知見】

  • 28V50WのAC球を使って、雷の激しい点滅を表現しました。正直、この電球を使ってみたかっただけで、効果は微妙でしたが。カットインの反応が良かったので点滅感が出ました。
  • この頃の吉田寮食堂は床がデコボコだったので、雨が降ると浸水して大変でした。調光ユニットが濡れないように箱馬でかさ上げしたり、入口に土嚢を積んだり、サバイバルな環境で演劇をやっていたものです。
※投票ボタンは撤去しました。ご意見ご感想はコメント欄またはメールフォームへどうぞ。
タグ: | カテゴリ:照明ケーススタディ [ 2018/02/05 22:18 ]

こちらにコメント書くのはご無沙汰です。
私が屋上感出すなら、普通の人が思い浮かべる記号としての屋上感を照明オブジェとして出すかな。
ソースフォーに、屋上の手すりとテレビアンテナの影ってのだけうまく作って床に斜めに投影するとか。
記号なので、リアルに影じゃなくても反転して光の枠でもいいかもですね。
あとはわざと屋上に上がるドアがついている場所に遮られた影を床に大きくつけるとかだとどうでしょうか?
[ 2018/03/30 03:17 ] [ 編集 ]

コメントをどうぞ





トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://lightingkizai.blog.fc2.com/tb.php/170-653a2d5a